アパート一棟の買取価格——「収益」で決まる

マンションの一室や一戸建てであれば、近隣の成約事例をもとに査定する「取引事例比較法」が主流です。しかし、アパート一棟の場合は事情が異なります。買取業者が最も重視するのは、その物件が「いくらの家賃収入を生むか」です。

これを「収益還元法」と呼びます。アパートの買取価格を理解するうえで、この考え方の基本を押さえておくことが重要です。

💡 この記事の結論

小規模アパート一棟の買取価格は、年間家賃収入を期待利回りで割った「収益還元法」で算出されます。空室が多い物件は「満室想定賃料」で評価されるケースもありますが、空室リスク分が割り引かれます。入居者がいる状態(オーナーチェンジ)での売却が最もスムーズで、買取業者なら入居者への通知・管理会社の引継ぎも含めて対応します。

収益還元法の基本——計算式と具体例

直接還元法の計算式

収益還元法にはいくつかの手法がありますが、小規模アパートの査定で最もよく使われるのが「直接還元法」です。計算式はシンプルです。

📐 直接還元法の計算式

物件価格 = 年間純収益(NOI) ÷ 期待利回り(キャップレート)

年間純収益(NOI)= 年間家賃収入 − 年間経費(管理費・修繕費・固都税・保険料等)
期待利回り = エリア・築年数・構造によって変動(目安:5〜10%)

具体例で計算してみる

たとえば、以下のような小規模アパートを想定します。

項目 内容
所在地 東京都郊外(駅徒歩10分)
構造 木造2階建て
築年数 25年
戸数 6戸(1K×6)
月額賃料 5.5万円/戸(満室時)
現在の稼働 5戸入居・1戸空室
年間家賃収入 5.5万円 × 6戸 × 12か月 = 396万円(満室想定)
年間経費 約80万円(管理費・修繕積立・固都税・保険)
年間純収益(NOI) 396万円 − 80万円 = 316万円

このエリア・築年数での期待利回りを8%と仮定すると、

物件価格 = 316万円 ÷ 8% = 3,950万円

ただし、これは「満室想定」での計算です。現状1戸が空室であることや、築25年の修繕リスクを考慮すると、実際の買取価格は3,200万〜3,600万円程度になるのが一般的です。

買取価格を左右する5つの要素

同じ収益還元法を使っても、以下の要素によって査定額は大きく変動します。

要素1:空室率と稼働率

空室が多いほど、買取業者にとってはリスクが高くなります。満室稼働中のアパートと、半分空いているアパートでは、同じ建物でも査定額に大きな差が出ます。

稼働率 買取価格への影響
90〜100%(満室〜1戸空き) 最も高い評価。安定収益が見込める
70〜90% 空室リスク分を割引。賃料設定の見直し余地も評価
50%未満 大幅割引。ただし「満室にできるポテンシャル」で評価する業者もある
全空(0%) 土地値+建物の残存価値で評価。収益還元法が使いにくい

要素2:立地と賃貸需要

駅からの距離、周辺の大学・工場・商業施設の有無、人口動態などが賃貸需要を左右します。東京23区内であれば利回り5〜7%、郊外や地方都市では8〜12%が目安です。利回りが低いほど物件価格は高くなる(=安定した需要があると評価される)点に注意してください。

要素3:築年数と建物の状態

木造アパートの法定耐用年数は22年です。築22年を超えると減価償却上の残存価値はゼロになりますが、実際の建物としてはまだ使えるものが大半です。買取業者は法定耐用年数ではなく、実際の構造躯体の状態と、あとどれくらい使えるかを重視します。

外壁のひび割れ、屋根の防水状態、給排水管の状態——これらの修繕にいくらかかるかが、買取価格に直接影響します。

要素4:入居者の属性と賃貸借契約の内容

長期入居者が多いアパートは収益の安定性が高く評価されます。逆に、家賃滞納者がいる場合や、相場より著しく安い賃料で契約している入居者(いわゆる「安貸し」)がいる場合は、マイナス評価になります。

要素5:土地の資産価値

建物が老朽化して将来的に解体が必要になった場合、最終的に残るのは土地です。土地の面積・形状・接道状況・用途地域によって、「出口としての土地値」が変わります。土地の資産価値が高いエリアでは、建物の状態が悪くても一定の買取価格がつきます。

オーナーチェンジ買取の仕組み——入居者がいても売れる

「入居者がいるけど売却できるのか」というご質問をよくいただきます。答えは「入居者がいる状態のまま売却できます」。これを「オーナーチェンジ」と呼びます。

オーナーチェンジの流れ

オーナーチェンジでは、賃貸借契約はそのまま新オーナー(買主)に引き継がれます。入居者にとっては、家賃の振込先が変わるだけで、生活に影響はありません。

手続き 対応者
入居者への通知(オーナー変更のお知らせ) 売主と買主の連名で通知
管理会社の引継ぎ 現管理会社→新管理会社(または買主が直接管理)
敷金の承継 売主が預かっている敷金を買主に引き渡す
家賃の精算 引渡し日を基準に日割り精算

買取業者に売却する場合、これらの手続きは業者側が主導して進めます。売主が入居者一人ひとりに連絡する必要はありません。

💡 入居者に退去してもらう必要はない

「売却前に入居者に退去してもらわなければ」と考える方がいますが、収益物件の売却では逆効果です。入居者がいる=家賃収入がある状態のほうが、買取業者にとっては収益の裏付けがあるため、高く評価されます。空室にしてしまうと「本当に入居者がつくか」というリスクが加わり、むしろ査定額が下がることがあります。

当社のアパート買取への対応

不動産売却サポート株式会社では、小規模アパート一棟の買取に対応しています。

小規模アパートの買取対応
対応規模 4戸〜20戸程度の小規模アパート一棟
構造 木造・軽量鉄骨・鉄骨造いずれも対応
築年数 制限なし(築40年超・旧耐震でも対応)
入居状況 満室・一部空室・全空いずれも対応
オーナーチェンジ 入居者への通知・管理会社引継ぎを当社が主導
決済方法 現金決済(融資特約なし)
契約不適合責任 原則免責

相続アパートの出口戦略

親から相続したアパートの扱いに困っているというご相談が増えています。「賃貸経営を続ける気はないが、入居者がいるので売れないと思っていた」「修繕費がかさんで赤字になりそう」——こうした状況では、オーナーチェンジでの買取が最もシンプルな出口戦略です。

賃貸経営の知識がない相続人が無理に経営を続けるよりも、適正価格で売却して現金化するほうが、相続人全員にとって合理的な選択になることが多いです。

アパートの売却をお考えの方は、まずはレントロール(賃料一覧表)と建物の基本情報をお送りください。概算の買取価格を1〜2営業日でお伝えします。

📝 アパート一棟の買取もお任せください。無料査定はこちら 📄 関連記事:相続アパートの売却——兄弟間の合意と選択肢 📄 関連記事:収益物件の出口戦略 📊 買取実績・解決事例を確認する